戒めは 人のためならず
かつて、「新潟県中越地震」で大きな被害に見舞われた山古志村のお話ということで、「マリと子犬の物語」を鑑賞した際の感想にも、「父親役の船越英一郎演じる石川優一と私は同じだ。何が同じって、そう、犬が好きじゃない。犬を飼うなら猫を飼う。して、かつて猫を飼った経験がある。犬はない。お犬を連れての散歩の方々が多いが、すれ違うとき、その犬の大きさに比例して距離を置いてすれ違うことにしている」というようなことを書きました。どちらかというと犬は苦手です。
でも、この映画を観てしまいました。気になったのが、その10の約束である「犬の十戒」。
1.私と気長につきあってください。
(Give me time to understand what you want of me.)
2.私を信じてください。それだけで私は幸せです。
(Place your trust in me. It's crucial to my well-being.)
3.私にも心があることを忘れないでください。
(Be aware that however you treat me I'll never forget it.)
4.言うことを聞かないときは、理由があります。
(Before you scold me for being lazy, ask yourself if something might be bothering me.)
5.私にたくさん話しかけてください。人の言葉は話せないけど、わかっています。
(Talk to me sometimes. Even if I don't understand your words, I do understand your voice when it's speaking to me.)
6.私をたたかないで。本気になったら私のほうが強いことを忘れないでください。
(Remember before you hit me, I have teeth that could hurt you, but that I choose not to bite you.)
7.私が年を取っても、仲良くしてください。
(Take care of me when I get old.)
8.あなたには学校もあるし友達もいます。でも、私にはあなたしかいません。
(You have your work, your entertainment, and your friends. I have only you.)
9.私は10年くらいしか生きられません。だから、できるだけ私と一緒にいてください。
(My life is likely to last 10 to 15 years. Any separation from you will be painful for me.)
10.私が死ぬとき、お願いです。そばにいてください。そして、どうか覚えていてください。私がずっとあなたを愛していたことを。
(Go with me on difficult journeys. Everything is easier for me if you are there. Remember I love you . . .)
(原典:犬の10戒)
特に想ったのが、8の「あなたには学校もあるし友達もいます。でも、私にはあなたしかいません。」ですね。実際に、 福田麻由子演じる子ども時代の斉藤あかりは、まあよしとして、 田中麗奈演じる斉藤あかりの頃になると、ソックス(犬の名前。足が靴下がいているような模様。母親の高島礼子演じる斉藤芙美子が名付け親)を疎ましくおもうようになっちゃいますね。
それにしても余談ですが、福田麻由子と田中麗奈、似てますね。前から思ってたんです。ひそかに、子ども時代と大人時代で共演すればいいのに、そう思ってたんです。見事この映画で実現してくれちゃいました。やったあ。
で、逆に、あかりの父親の豊川悦司演じるお医者さん斉藤祐市の方が、初めは仕事人間だったんですけど、家族を、ソックスを大事にするようになります。この父親の気持ちの推移、いいですね。でも、悲しいかな、そこには、高島礼子演じる妻の斉藤芙美子の病死がきっかけとしてあります。
確かに、そんなことがきっかけであることは悲しくて淋しいんですけど、この映画、物語として、それがあるからこそ厚みのある映画になってるんですね。そう、単なるワンちゃんへの愛情のお話ではない、ということです。犬好きの方に限った作品では決してありません。
体調を崩して入院していた母親の芙美子は、あかりに、犬を飼う時、犬と「10の約束」をしなければならないことを教えます。ソックスは初め我が家に紛れ込んできた犬という位置づけになっていますが、実は、死期を知った芙美子さんの娘へのプレゼントなんですね。しかも、それは、ただの贈り物じゃない。母親の死後、あかりが大人へと成長していく過程、自分の代わりにいつもそばにいて、あかりを励ます、使者だったんですね。
芙美子がソックスとして接する10年間、その間に芙美子が娘あかりを育んだのは、犬に対してだけではない、人に対しても含めての思いやる愛情だったのではないでしょうか。そして、私が特に想った「あなたには学校もあるし友達もいます。でも、私にはあなたしかいません。」というのは、少々旦那である祐市には可哀相ではありますが、母親が偏に我が娘に心を注ぐ気持ち。そう思うと、もっともっと、このコトバが熱く感じられるんですね。
あかり自身は、ソックスとの関係で育んだ母親からの愛情のおかげで、ソックス死後、自らもかけがえのない伴侶と結ばれます。お相手は、幼少の頃からソックスとの関わりも含めて仲の良い、ギタリスト志望の星進(加瀬亮)。おそらく、彼へのあかりの愛情は、きっとソックスに託した芙美子の、旦那である祐市への愛情と相似形、そう思えば、先の「祐市には可哀相」も解消されますね。
もう一度言います。単なるワンちゃんへの愛情物語、「犬の十戒」を描いただけお話じゃ、ないんです。そして、10番目の十戒、「私が死ぬとき、お願いです。そばにいてください。そして、どうか覚えていてください。私がずっとあなたを愛していたことを。」を噛み締めます。あかりに説いた芙美子の声が私の頭の中で木霊のようにリフレインしてやみません。
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